フランスの重鎮ジプシー・バンドの最新作はアーバン・ミュージック！？

　フランスを拠点に活躍するジプシー〜東欧系ベテラン・バンドと言えばこちらのブラッチ。ヨーロッパのワールド・ミュージック・シーンでは常にその動向が注目されている彼らですが、35周年を記念し多彩なゲストを交えて制作された2007年の前作『たくさんの世界（原題：PLEIN DU MONDE）』（ライス HMR-5232）以来４年ぶりとなる新作をいよいよ発表してくれました。
　ブラッチは、アルメニア系フランス人ダン・ガリビアン（ギター）を中心に1972年に結成。ロックやジプシー・スウィングを特に好んでいたというダンと共に創始メンバーだったのが、当時ジャズ界隈で活躍していたブルーノ・ジラール（ヴァイオリン）とピエール・ジャケ（ベース）で、彼ら３人はいまもバンドに在籍しています。当初はアフリカやアラブの音楽までを視野に入れたミクスチャー・サウンドを志向していた彼らでしたが、まもなくジプシーやクレツマーなどの東欧音楽に傾倒してゆきました。また1989年より参加したクラリネット奏者のナノ・ペイレはクレツマー・ミュージシャンとして数枚のアルバムも残しており、またアコーディオン奏者フランソワ・カスティエーロもソロ・アルバムをリリースし、“バルカン・ビートの皇帝”ＤＪシャンテルのアルバムにも参加。それからは不動のメンバーで順調に活動を続け、ヨーロッパでは安定した人気を誇ってきました。
　そんな彼らの15枚めのスタジオ録音作となった本作のテーマはずばり“アーバン”。元来彼らはどちらかというとジプシー音楽やクレツマーをベースに東欧世界の田舎をモティーフにした音楽を作り出してきましたが、今回は特に歌詞の面において都会をテーマにした内容のモノを吟味しレパートリにしたとのこと。中には10年前に完成しつつ、その時のアルバムのテーマには合わず、これまで温存してきたモノもあるそうです。収録曲の多くはメンバーによる自作ですが、ルーマニアやアルメニアで古くから親しまれてきた曲や、ナポリのセレナーデなども取り上げるなど、幅広い地域からからの楽曲も収録されています。
　もちろんジプシー音楽らしい高速のナンバーや、クレツマーっぽい哀愁のあるメロディーなど、これまでのブラッチらしいサウンドもしっかりと残されていますが、ベテランながらいまだ進化し続ける姿勢は素晴らしいと言えるでしょう！　多くのヨーロッパ音楽ファンに聞いていただきたい新作です。

試聴はこちら（公式HP）

1. SIRBA DIN JOC DE CONSTANCA / HORA
2. SCETATE
3. FUEGO
4. DANS LE CIEL DE MA RUE
5. SKA FONCE
6. ON PEUT TOUJOURS REVER
7. RER C
8. INTRO GARO/ GAROIBAR
9. LA BONNE AVENTURE
10. CARAMBOLE
11. LA FIANCEE DU PIRATE
12. CLICHES
13. MALAKOFF
14. PHARIZM
15. SIYALE
16. KATUNSKO HORO