70年代を中心としたアフロ系レアー音源を紹介するドイツのレーベル“Analog Africa”の最新作は、定期的に発表してきたラテン・プロジェクトの一環で、今回はメキシコで60〜80年代に掛けて若者たちを魅了した“レバハーダ”と呼ばれたクンビア系の音楽を紹介します。 メキシコにおいて20世紀半ばに登場したのが、中南米全体で人気の音楽クンビアやサルサ、グァラーチャなどのレコードをDJたちが公共の場でプレイするサウンド・システム“ソニデーロ”(Sonidero)でした。そこで特に高い人気を誇ったジャンルがクンビアでしたが、アップテンポなコロンビア産のクンビアのビートはメキシコ人たちには少し早過ぎて踊りづらかったため、ターンテーブルを改良してレコードの回転数を遅くして演奏したところ、たちまち大人気になった…というのがこれまで定説としてありましたが、本当のところは機材のトラブルで“意図せず”回転数が遅くなってしまったことで偶然生まれたものだったそうです。そしてそんなダウン・テンポのクンビアをメキシコでは“レバハーダ”(Rebajada=下げる)と言い、サイケデリックな雰囲気を纏ったそのミックスのことは“レバハーダ・モタ・ミックス”(Rebajada Mota Mix)と呼ばれています。 本作には本国メキシコのほか、エクアドル、ペルー、ベネスェーラ、コロンビアなどで60〜80年代にヒットしたクンビア・ナンバーを、当時ソニデーロで演奏されていたレバハーダ・モタ・ミックスの音源を集めた決定盤です。タイトル・トラック‘Saturno 2000’はペルーのロス・サントスが1972年に発表した音源が元になっているほか、同じくペルーで活躍したギター・ヒーロー、マンサニータの1977年録音‘Paga La Cuenta Sinverguenza’、ベネスェーラの音楽家ウーゴ・ブランコが1963年に発表した名曲‘Infinito’、さらに他では聴くことのできない貴重な録音も今回取り上げられています。 回転数を落とすと同時に音程も落ちてしまいますが、そのことで独特のドッシリとした音質とヒプノティックなテイストが加わり、聴くにつれドンドンと中毒的にハマってしまうのが、このアルバムで聴けるレバハーダの魅力です。そしてこれまでの同シリーズと同様に豪華なブックレット(28ページ)には、レバハーダ誕生に関するインタビューなどを交えたライナーノーツや貴重写真、データ類が満載ですので、フィジカル商品としての価値は非常に高いと言えるでしょう。 まさに“Analog Africa”ならではの独自の切り口で楽しめるサイケデリック・クンビア。これも大いに話題となりそうです。
●日本語解説/帯付き
トラックリスト 1. Sampuesana - Los Dinners 2. La Borrachita - Junior Y Su Equipo 3. Paga La Cuenta Sinverguenza - Manzanita 4. Infinito - Hugo Blanco Y Su Arpa Viajera 5. El Jardinero - Manzanita Y Su Conjunto 6. Feito Parrandero - Los Feos 7. Bien Bailadido - Junior Y Su Equipo 8. Saturno 2000 - Los Santos 9. La Danza Del Mono - Lucho Gavilanes 10. Capricho Egipcio - Conjunto Tiupico Contreras 11. El Chacarero - Los Gatos Blancos 12. Pa Oriente Me Voy - Los Atomos De Paramonga 13. Alegrate - Junior Y Su Equipo 14. Todo Lo Tengo De Ti Menos Tu Amor - Grupo Celeste 15. La Fuga Del Bandido - Los Ecos
2024年4月21日発売 V.A. / SATURNO 2000 - LA REBAJADA DE LOS SONIDEROS 1962-1983