合衆国テキサス州ヒューズ・スプリングスの農場で誕生したブルース歌手兼ギタリスト〈ブラック・エイス〉ことベイブ・カイロ・レモン・ターナー(1905-72)。椅子に座った状態で膝の上にナショナル・リゾネイター・ギターを置き、ナイフあるいは薬瓶のボトルネックでスライド演奏を行うという〈ハワイアン・スタイル〉と〈カントリー・ブルース・スタイル〉を融合させたプレイ・フォームは、彼およびオスカー・ウッズ(1895-1955)の活躍によって、世に広く知られるようになりました。 少年時代より独学でギターの演奏技術を習得していった彼は、1920年代後半より東テキサス地域を拠点に音楽活動を開始。1930年代に入るとナショナル・リゾネイター・ギターを購入し、後に評論家たちが〈ハワイとデルタの出会い〉と評するようになる、彼独自のスライド・ギター・ブルース・スタイルを確立していきました。活動初期においては、ライトニン・ホプキンス/ジョン・ホグの従兄弟としても知られる戦後テキサス・カントリー・ブルースの巨人:スモーキー・ホッグ(1914-60)や、先述したスライド・ギター・ブルースのパイオニアの一人:オスカー ・バディ・ウッズなどと共演。B. K. ターナー、ブラック・エース・ターナー、ベイブ・ターナー、バック・ターナーなど、様々なステージ・ネームを使用しつつ活動を継続していきます。 そして1937年には代表曲「BLack Ace」を含む計6曲をデッカで録音。同年、地元フォートワースのラジオ局KFJZにおいてラジオ番組を担当することとなりますが、先述したナンバーは同番組のテーマソングとなり、また彼自身も地元テキサスの人気ブルースマン〈ブラック・エイス〉として、その名を轟かせていくこととなりました。そして1941年、スペンサー・ウィリアムズ・ジュニアのプロデュースによるアフリカ系アメリカ人映画「The Blood of Jesus」に出演し、さらに知名度が向上。しかしその2年後には徴兵のために音楽活動を断念し、退役後は肉体労働者や守衛などを生業とすることに。こうしてブラック・エイスは、テキサス ・ブルース・シーンよりその姿を消していきました。しかしフォーク・リヴァイヴァル・ブーム熱が高まった1960年。アーフーリー・レコード設立者:クリス・ストラクウィッツが、レコーディングを行うよう彼を説得。これによってアーフーリーでのアルバム制作が実現されました。 今回ご紹介する作品は、1960年8月と9月に録音された2つのセッションと、代表曲「BLack Ace」のオリジナル・ヴァージョンを含む1937年録音の6曲、計23曲を収録。クリス・ストラクウィッツも魅入られた、ブラック・エイス特有の渋くも朗々とした歌声と、滑らかで雄弁なスライド・ギターのコンビネーションは、一度聴いたら止められなくなるほどの魔力を持ちます。ブルース・ファンの方、必携の一枚です!
●日本語解説/帯付き
トラックリスト 1. I Am The Black Ace 2. Bad Times Stomp 3. Drink On Little Girl 4. Santa Fe Blues 5. New Triflin' Woman 6. Evil Woman Blues 7. 'Fore Day Creep 8. Little Augie 9. Your Legs' Too Little 10. No Good Woman 11. Santa Claus Blues 12. Golden Slipper 13. Hitchhiking Woman 14. Ace's Guitar Blues 15. Beer Drinking Woman 16. Ace's Guitar Breakdown 17. I've Been In Love With You Baby 18. Trifling Woman 19. Black Ace 20. You Gonna Need My Help Someday 21. Whiskey And Women 22. Christmas Time Blues 23. Lowing Heifer
2025年3月2日発売 BLACK ACE / I'M THE BOSS CARD IN YOUR HAND