テキサス州タイラー出身のブルース・ギタリスト/歌手のメルヴィン・"リル・サン"・ジャクソン(1915- 1976)は、第二次世界大戦後数年間にわたり、テキサス地域におけるブルース/カントリー/ケイジャン・レコードの重要な供給元となっていたヒューストン伝説のレーベル《ゴールド・スター・レコード》(1946~51年)より「Freedom Train Blues」(1948)でレコード・デビュー。40年代後半から50年代初頭にかけ、ライトニン・ホプキンスに並ぶ同レーベルの看板アーティストとして大きな人気を集めました。そんなジャクソンは卓越したカントリー・ギタリストとして知られ、特にモノトニック・ベース奏法(ベース・ラインを鳴らしながら同時にメロディを弾く奏法)の名手として、ブルース・ギター・ファンの人々から熱い注目を浴びた人物でもあります。 ゴスペル・ギタリストを母を持つジャクソンは、幼少よりギター演奏に親しみ、同州に住む4歳年上のライトニン・ホプキンスよりギターの手ほどきを受ける、ブラインド・レモン・ジェファーソンのレコードを聴いて奏法を学ぶなどした後、スピリチュアル・グループ〈ブルー・イーグル・フォー〉の一員として音楽活動を開始しました。そしてその後、自動車整備士、米国陸軍従軍を経て、ブルース・ミュージシャンの道へ。ゴールド・スター・レコードより「Freedom Train Blues」をリリースし、全米ヒットを記録しました。そしてその後1950年にリリースされた「Rockin’ and Rollin」も大変な人気となり、のちの1962年にはB.B.キングが「Rock Me Baby」として追演。以降様々な派生ヴァージョンが誕生していきます。このようにジャクソンのキャリアは順調に進んでいるかのように思われましたが、1950年代半ば、自動車事故によって負傷。音楽活動を断念せざるを得なくなり、以降、自動車整備士の仕事へと戻っていきました。 そんな中1960年、アーフーリー・レコード創設者:クリス・ストラクウィッツが、ダラスで整備士として働いていたジャクソンを発見。ストラクウィッツは彼にアルバムのレコーディングを勧めます。そこで制作されたのが本作『ブルース・カム・トゥ・テキサス』(1960年オリジナル・リリース)でした。本作には、華麗な指捌きに耳が離せなくなるギター・インストゥルメンタル・ナンバー「Buck Dance」(⑰)、1950年代のヒット曲「Rockin' and Rollin」の別ヴァージョン「Red River Blues」(⑮)、「Rock Me」(⑲)などを含む、1960年ダラスでのレコーディング・セッション音源のほぼ全てが収録されています。 ジャクソンは才能豊かなギタリストであった反面、人前で演奏することに消極的だったため、本アルバム発売後も音楽キャリアの再開を望まず、1960年当時興隆していたブルース・リヴァイヴァル・ブームにも関与することがありませんでした。しかし彼はその後も信奉を集め続け、エリック・クラプトンが2010年のアルバム『クラプトン』においてジャクソンの「Traveling Alone」をカヴァーするなど、次世代のブルース・ギタリストたちに大きな影響を与え続けています。 本作はそんなリル・サン・ジャクソンの演奏を収めた貴重な一枚。カントリー・ブルース ・ギター・ファンの方は必携です!
●日本語解説/帯付き
トラックリスト 1. Blues Come To Texas 2. Cairo Blues 3. Ticket Agent 4. Louise Blues 5. Sugar Mama 6. The Girl I Love 7. Santa Fe Blues 8. Turn Your Lamp Down Low 9. Groundhog Blues 10. Gambler Blues 11. Charley Cherry (Take 1) 12. Charley Cherry (Take 2) 13. West Dallas Blues 14. Rollin' Mill Went Down 15. Red River Blues 16. Johnnie Mae 17. Buck Dance 18. I Walked From Dallas 19. Rock Me 20. Roberta Blues
2025年7月6日発売 LIL' SON JACKSON / BLUES COME TO TEXAS