ブルース発祥の地:合衆国南部ミシシッピ・デルタ。デルタ・ブルースの巨匠:ミシシッピ・フレッド・マクダウェル(1904-72)は、ヒプノティックなスライドギター演奏と力強い歌声によって、数々の傑作を生み出しました。今回は、そんな彼がアーフーリー・レコードに残した人気盤『グッドモーニング・リトル・スクールガール』(1965年録音)をご紹介いたします。 フレッド・マクダウェルは、テネシー州ロスヴィルで誕生。14歳でギターを弾き始めた彼は、地元のダンス・パーティーで伴奏を務めるなどし、チップを稼ぐようになりました。その後1926年にはメンフィスへと移住し、飼料工場に勤務。この頃、ブラインド・レモン・ジェファーソンやチャーリー・パットンのレコードと出会い、大きな感銘を受けています。そして28年には、デルタに隣接したミシシッピ州北部パノーラ郡の小さな田舎町:コモへとさらに拠点移動。コモではフルタイムの農夫として生活しつつ、仕事のない週末には、コミュニティー内でのダンス・パーティーにおける伴奏やピクニックでの演奏などに興じるなどしており、音楽活動については依然、アマチュアの域に留められていました。ところが1959年のとある日。マクダウェルの存在は、フィールド・リサーチのために同地を訪れていた民俗音楽研究家:アラン・ローマックスと英国の伝統フォーク歌手:シャーリー・コリンズ(1935- )の両名によって発見され、人生初のレコーディングを経験。同音源が収められたコンピレーション・アルバムを介してフレッドの存在を知ったアーフーリー・レコーズ創立者:クリス・ストラクウィッツは、早速彼の自宅を訪問。1964年より彼名義のアルバムをリリースしていくこととなりました。またフレッドによる複雑なリズムと豊かな詩情を湛えた演奏は、同時期に興隆していたブルース・リヴァイヴァル・ブームの渦中でも大きな注目を浴びることに。ファンを公言するローリング・ストーンズやボニー・レイットのほか、R.L. バーンサイド、ローウェル・ジョージ、デュアン・オールマンなど、60〜70年代より頭角を現していくこととなったスライドギターの名手たちにも多大な影響を与えました。 そんなフレッドによる1965年の音源をまとめた本作は、〈ブルース〉と〈スピリチュアル(黒人霊歌)〉による2部構成。第一部では、ブルース・スタンダードを全11曲披露しています。タイトル・トラック「Good Morning Little Schoolgirl」(� 砲蓮▲屮襦璽后Ε蓮璽皀縫�のパイオニア:ジョン・リー・“サニー・ボーイ”・ウィリアムソン(1914-48)が1937年に最初にリリースして以降、ジョン・リー・フッカー、ライトニン・ホプキンス、マディ・ウォーターズなど多くのブルースマンたちによって取り上げられてきた名曲。ロック・シーンにおいてもヤードバーズやロッド・スチュワート、グレイトフル・デッド、テン・イヤーズ・アフターなどがレコーディングしています。フレッドのヴァージョンでは、彼のスペシャリティである力強いリズムとヒプノティックなメロディー演奏が同居したスライドギター・プレイを心ゆくまで堪能することができます。第二部の〈スピリチュアル〉では、マクダウェル夫人でゴスペル歌手のアニー・メイも登場。南部の黒人教会を想わせるアニーのソウルフルな歌唱と、マクダウェルのアーシーなスライドギターとの共演は必聴に値します。特に有名賛美歌「Amazing Grace」(��)や、「When The Saints Go Marching In」()などに見られるアレンジは白眉。シンコペーションの強いリズム、コール・アンド・レスポンス、自由への切望を秘めた歌詞、魂のこもった歌唱、そして即興性が揃ったリアルなスピリチュアルの世界をじっくりと味わうことができます。是非お楽しみに。