2025年4月13日発売新譜 《UNESCO Collection of Traditional Musicシリーズ第18弾》 ヴェトナム伝統音楽の宝：伝統芸能音楽カーチューと伝統民謡クアンホを堪能できる一枚
米国の名門レーベル：スミソニアン・フォークウェイズが所蔵する〈UNESCO Collection of Traditional Music〉は、世界70ヶ国以上で採集された民俗音楽のコレクション。シリーズ全127枚のアルバムから成りますが、アフリカ、アジア、オーストラリアおよびオセアニア、ヨーロッパ、北米、南米といったテーマの中でさらに細分化され、普段は耳にすることができない少数民族の歌声や、神秘的な器楽演奏などが数多収録されています。音源は1970年代から80年代にフィールド・レコーディングされたものが中心となりますが、いずれも資料価値が高い上に音質も大変に優れたものばかり。それらをより多くの人々にお楽しみいただくため、2024年５月より〈UNESCO Collection of Traditional Music〉のカタログから特に優れたものを厳選し、シリーズとして順次ご紹介させていただいております。第一弾『ピグミー〜アカ族の神秘の歌声』（サンビーニャ・インポート FLSI-31018）から始まった同シリーズ。今回その第18弾としてご紹介するのはベトナム北部の伝統声楽歌曲：カーチューと民謡：クアンホに焦点を当てた作品です。 伝統芸能音楽〈カーチュー〉は、李王朝時代の11世紀、ヴェトナム北部ホン河（紅河）のデルタ地帯で誕生。このカーチューは、伝統弦楽器：ダンダイー／打楽器：チョンチャウの演奏に併せ、ダオヌォンと呼ばれる女性の歌い手が、ファィック（竹または木の板）を棒で叩きながらリズムをとりつつ、美しい古語の詩を独特の節回しで情感豊かに吟ずるという形式を持ちます。ちなみにベトナム語で、カーは歌、チューは札を意味。この２つの言葉から成るカーチューは、元来は歌に対する褒美として、歌い手が聴衆から報酬金額の書かれた竹製の細い札をもらうという様式を取っていたことからそう呼ばれるようになりました。歌詞の内容は概ね祖先や神を称えるものとなっていますが、その使用言語は古いベトナム語（漢字を応用して創作されたチュノム文字や漢詩）。したがって、誕生当時はこれを読解することのできる知識人／上流階級の人々の間で大変に流行したと伝えられています。本作では有名カーチュー歌手：クアック・ティ・ホー（1909-2001）が歌唱。カーチューは2009年、ユネスコ世界無形文化遺産として認定されています。 一方伝統民謡の〈クアンホ〉は、ハノイから約30キロほど離れた北部バクニン省（現在のハバク）で誕生。こちらは笛や弦楽器の演奏をバックに、男女４〜５名のグループに分かれて行われる歌の掛け合いが基本形式となり、一方のグループが歌った後、もう一方のグループが同じメロディーに異なる歌詞を乗せて歌い返すというスタイルがその大きな特徴となります。男女のグループで歌われるクアンホは、かつては出会いの場で頻繁に歌われ、歌詞の内容も恋愛や友情（加えて故郷に対する郷愁）に関するものが最も多いと言われています。一方、出会いを目的とする以外では、慶事や神事、雨乞いなどの祈願、厄除けなどといった儀礼の場でも歌われていました。クアンホもカーチュー同様、世代から世代へと口承で受け継がれてきたその音楽的・文化的価値が認められ、2009年、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。 中華的な雅やかさ、そしてどこか粛々とした雰囲気のあるカーチューに対し、日本の伝統民謡を彷彿とさせるような懐かしさや馴染みやすさも持つクアンホ。本作はヴェトナムの音楽伝統における２つの異なる個性をじっくりと堪能できる一枚となっています。カーチュー／クアンホに関する詳細な解説が掲載されたオリジナル・ライナーノーツにつきましては、商品帯に添付されたQRコードを読み取ることより、PDFファイル形式でのダウンロードが可能（ダウンロード無料）となっておりますので、ご興味をもたれた方は是非目を通されてみてください。
