2026年11月29日発売新譜 《UNESCO Collection of Traditional Musicシリーズ第31弾》 アルゼンチン北西部アンデス地方だけに伝わる〈もう一つの音楽宇宙〉
米国の名門レーベル、スミソニアン・フォークウェイズが所蔵する〈UNESCO Collection of Traditional Music〉は、世界70カ国以上で採集された民俗音楽のコレクション。シリーズ全127枚のアルバムから成りますが、アフリカ、アジア、オーストラリアおよびオセアニア、ヨーロッパ、北米、南米といったテーマの中でさらに細分化され、普段は耳にすることができない少数民族の歌声や、神秘的な器楽演奏などが数多く収録されています。音源は1970年代から80年代にフィールド・レコーディングされたものが中心となりますが、いずれも資料価値が高い上に音質も大変優れたものばかり。それらをより多くの人々にお楽しみいただくため、2024年5月より〈UNESCO Collection of Traditional Music〉のカタログから特に優れたものを厳選し、シリーズとして順次ご紹介させていただいております。第一弾『ピグミー〜アカ族の神秘の歌声』(サンビーニャ・インポート FLSI-31018)から始まった同シリーズ。今回その第31弾としてご紹介するのは『アルゼンチン〜北西部のトリトニック・ミュージック』です。 アルゼンチン北西部アンデス地方に今も息づく、〈トリトニック(Tritonic / 三音音階)音楽〉の伝統。本作のテーマであるこの〈トリトニック〉とは、私たちが普段耳にするドレミ…の7音階や、東アジアの5音階(ペンタトニック)よりもさらに少ない、わずか〈3つの音〉だけで構成された、極めて原始的かつ洗練された音階システムです。フフイ州やサルタ州などをはじめとしたアンデス高地に暮らす先住民族系の人々は、スペイン人による征服やインカ帝国の拡大よりも遙か昔から、このトリトニックのメロディを口承によって守り続けてきました。 本作に収録されているのは、アンデス高地の人々の信仰や生活に根ざした、トリトニック音楽のリアルな記録。観光客向けのきらびやかなフォルクローレとは一線を画す、野趣あふれる響きがその最大の魅力となります。 主な収録は、牛の皮を張った小さな平太鼓〈カハ〉を叩きつつ、高音の裏声を交えて即興の詩を歌い上げる〈コプラ(Copla)〉。圧倒的な呪術性を放つ強烈な歌声が、厳しい大自然の中に響き渡ります。 続いて、 アルペンホルンのように数メートルもの長さを持つ巨大な抱え角笛〈エルケ(Erke)〉の演奏。こちらは晩秋から冬にかけての祭礼や家畜の祈祷でのみ演奏が許されている楽器であり、その低く地を這うような野性的な音響が、トリトニックの旋律をミステリアスに奏でます。 さらに、牛の角で作られたラッパ〈プトゥトゥ(Pututu)〉。こちらは、儀式の始まりや合図として奏でられ、その轟わたるサウンドが、人々の魂を揺さぶります。 西洋音楽の調性や和音の概念からは完全に独立した、アルゼンチン北西部アンデス地方だけに伝わる〈もう一つの音楽宇宙〉。本作は熱心なワールドミュージック・ファンの方々にとって、南米大陸文化の深層に触れることができる第一級のオーディオ・アーカイヴであり、人間の根源的な表現衝動をそのまま音楽にした、土の香りと祈りに満ちた傑作です。是非ご期待ください!