〈孤高の天才ピアニスト〉セロニアス・モンク(1917-82)の音楽が、こんなにもビタースウィートで、こんなにも静謐で、こんなにも自由だったとは……。ドイツのジャズ/即興音楽家ブルカルト・クンケルが贈る本作は、モンクの楽曲に独自の角度から光を当てた、極めてパーソナルで詩的なトリビュート作品です。 1967年ヴュルツブルク生まれのクンケルは、ツィター、バス・クラリネット、バセットホルン、声などを自在に操るマルチ奏者であり、同時に児童・青少年精神科医でもあります。神学と哲学、そして医学を学んだ後、フランクフルトの即興音楽シーンで活躍し、ボブ・デゲンやミシェル・ピルツ、ルディガー・カール、トニー・ラカトシュらとの共演を重ねてきた異色の音楽家です。彼の音楽人生の原点は、幼い頃に夢中になったテレビ番組のテーマ曲―――そこからツィターへの愛が始まりました。10代でアルト・サックスに移り、クラシックの編曲や作曲も経験。その後フリー・ジャズに傾倒し、1990年代から再びツィターを手に取り、自由即興の世界にその音色を導入します。フィンランドで出会ったアコーディオン奏者マリア・カラニエミの影響もあり、ツィターはバラードの表現にも活用されるようになっていきました。 そして迎えた本作『MONXARELLA』。タイトルが暗示するように、これはモンクの音楽とツィターとの架橋を試みた作品です。鍵となるのは、モンクのソロ・アルバム『Thelonious Himself』や『Alone in San Francisco』に感じられる、あの内省的でとぼけた美しさ。クンケルはそれを、自身の“優しく、ちょっと哀しみを帯びた”音色で再構築していきます。 使用される楽器は、コード・ツィター、バス・クラリネット、バセットホルン、アルト・ツィター、ハープ・ツィター、シュルティ・ボックス(ドローン音専用の楽器)など多彩。しかもオーヴァー・ダビングを一切行わず、時に複数の楽器を同時に操りながら、即興的に演奏を重ねています。これはもはや演奏というより、“音による対話”であり、“孤独な詩人のモンクとの往復書簡”とも言えるでしょう。収録されているのは、�´キ欧箸い辰織皀鵐�の名曲に加え、クンケル自身によるオリジナル即興曲も多数。バス・クラリネットとハープ・ツィターが交錯する幻想的な曲�△筺▲轡絅襯謄�・ボックスを背景にモーダルな低音が響く�Α�二本のバセットホルンがコミカルに語り合う�┐覆鼻△匹離肇薀奪�もモンクの精神を継ぐ自由な創造に満ちています。 ユーモアと影、形式と逸脱、軽やかさと哀愁。それらを同時に内包するクンケルの音楽は、モンクの本質を実に見事に描写。聴けば聴くほど、モンクという存在の輪郭がじんわりと浮かび上がる。これはまさに、“もうひとつのモンク”を描き出した音のスケッチブックです。
トラックリスト 1. Reflections 2. The Expectation Of The Lone Dragon 3. Monks Mood 4. Functional 5. Pannonica 6. Um den Mnch herum 7. Light Blue 8. Beautiful, But Ugly 9. Ask Me Now 10. North Of The Sunset 11. Take To The Skies 12. Monk's Dream 13. Ruby My Dear 14. Deux hiboux au Crepuscule 15. Friday The 13th 16. Misterioso 17. Blue Monk 18. Round Midnight