1999年生まれ、リスボンを拠点に活動する作曲家/歌手/マルチ楽器奏者アナ・ルア・カイアーノ(Ana Lua Caiano)。ポルトガルの伝統民謡とエレクトロニクスを結びつけた独自の音楽で注目を集める彼女の、待望のセカンド・アルバムが登場します。2024年のワールド・デビュー作『ヴォウ・フィカール・ネステ・クァドラード』(ライス INR-3252)で示した音楽世界を掘り下げ、声、伝統楽器、電子音、そして身の回りの物音までを取り込んだ意欲作です。 6歳からクラシック・ピアノを学び、後にリスボンの名門ジャズ・クラブ〈ホット・クルービ・デ・ポルトガル〉の付属教育機関で4年間学んだカイアーノ。即興や音階の知識を養い、Jose AfonsoやJose Mario Brancoといったポルトガルのフォーク系シンガー・ソングライターに親しむ一方、BjorkやPortisheadにも影響を受けてきました。転機となったのはコロナ禍。自宅でひとり音楽を作る中で、声と楽器を重ねてゆく現在のスタイルを確立しました。2022年に最初のEPを発表し、同年にはWOMEXに出演。翌年の第2弾EPで評価を高め、国外での公演も重ねてきました。キーボード、ルーパー、打楽器などを駆使するワンマン演奏で国際的な注目を集めています。その音楽の根底にあるのは、各地で口承されてきた民謡のハーモニーやコーラス、そして身体に響くリズムです。 本作のタイトル『人生は短いのだから、ゆっくりと(Devagar Que A Vida E Curta)』は、祖父が繰り返し口にしていた言葉に由来します。幼い頃は、人生が短いなら急がなければと考えていた彼女も、今では日々を十分に味わうための言葉として受け止めています。絶えず急かされる暮らしと、立ち止まって現在を実感すること。その間にある緊張から、労働、移住、喪失、死、変化をめぐる歌が生まれました。 サウンド面では、前作以上にアクースティック楽器の存在感を高めています。重要なのが、自身の作曲の原点であるピアノ。そこにバグパイプ、フルート、四角い枠太鼓アドゥーフェ、大太鼓ボンボなどを組み合わせ、シンセサイザーや幾重にも重なる声と交差させています。さらにミシンなどの機械音もリズムの素材として活用。ブックレットには、2024年6月のアーティスト・レジデンシーで工場の音やアドゥーフェ奏者たちの演奏を収録したことも記されています。労働の反復が音楽の脈動へと変わり、声も繊細な響きから歪みや執拗な反復まで、多彩な表情を見せます。 「Uma Vida A Menos」では、週末や休暇を待ちながら労働に人生を費やす日々に問いを投げかけます。「Meu Amor, Fui」は、故郷を離れて働き、帰郷を先延ばしにする人の物語。身体を少しずつ失うという比喩で、移住に伴う喪失を描きます。また、Sages Comme des Sauvagesとの共作、Banduaのメンバーとの共同制作、Stereossauroによるプロデュース曲も収録し、音楽家との交流も作品に広がりをもたらしています。 伝統の歌やリズムに根ざしながら、現代を生きる人々の疲労や不安を鋭く映し出すカイアーノ。日常の中で失われてゆく時間を見つめ、自分の人生を取り戻そうとする本作は、実験的な音楽と切実な言葉が結びついた、彼女の到達点です。
●日本語解説/帯付き
トラックリスト 1. Procissao Dos Dias 2. Duas Mil Horas 3. Se A Cabeca Anda Manca 4. Devagar Que A Vida E Curta 5. A Bala Nunca Fez Amigos / Du Sang Sur Les Mains(feat. Sages Comme des Sauvages) 6. Um Mais Um 7. Perguntei A Morte 8. Come, Come, Cresce 9. Meu Amor, Fui 10. E Tu, Que Fazes? 11. Hoje E Segunda(feat. Bandua, Edgar Valente, Tempura the Purple Boy) 12. Uma Vida A Menos 13. Ai, Digo, Digo(feat. Stereossauro) 14. Vem Dancar 15. Procissao Dos Mortos
2026年11月8日発売 ANA LUA CAIANO / DEVAGAR QUE A VIDA E CURTA