ヨーロッパ・ジャズ・シーンに現れた最初のジャズ・レジェンドの一人、〈マヌーシュ・ギターの王者〉ことジャンゴ・ラインハルト(1910-53)は、ロマ音楽とスウィング・ジャズを融合させた〈マヌーシュ・スウィング〉の創始者であり、史上最も熟練したギタリストの一人として知られます。ロマの旅芸人一座に籍を置いていた両親の元、1910年ベルギーで誕生したジャンゴは、幼少より一座と共にヨーロッパ各地を旅して過ごし、ギターやヴァイオリンの演奏を身につけていきました。そして1920年からは、主にフランス・パリ周辺で生活。1926年にビリー・アーノルドのバンドの演奏を聴いて以来、彼はジャズに傾倒するようになり、1928年、17歳で最初のレコーディングを行いました。しかしその直後、火災事故によって彼のキャラバンは全焼し、ジャンゴは身体の半分に重度の火傷を負うことに。これによって彼の右足は麻痺し、左手の薬指と小指には障害が残ることとなりました。しかしこの怪我がきっかけとなり、ジャンゴは独自のギター奏法を開発(薬指と小指の2本の指を折り曲げたまま、残りの指のみで演奏)。特殊な奏法のため、それに合わせた独特なコード進行を導入することとなりましたが、このスタイルこそが、後に登場する〈マヌーシュ・ギター・サウンド〉の礎となりました。そして31年、後の盟友:フランス人ヴァイオリニストのステファン・グラッペリ(1908-97)と出会い、1934年にはグラッペリらと共に、弦楽器のみの編成によるフランス・ホット・クラブ五重奏団を結成。同バンドは、当時のヨーロッパにおいて最も革新的、かつ最も成功したジャズ・バンドとなりました。 今回ご紹介する作品は、「Minor Swing」「Manoir de Mes Reves」「After You've Gone」、そしてジャンゴ最大のヒットとなった「Nuages」など、ジャンゴ・ラインハルト/フランス・ホット・クラブ五重奏団を代表する1930年代〜40年代の音源を収録。ジャンゴのテクニカルかつ歌心あふれるギター演奏とステファン・グラッペリの流麗なヴァイオリン演奏のコンビネーションによる、誰にも真似できない妙味をじっくりと味わうことができる一枚です。もちろん、1930年代の小粋なマヌーシュ・スウィングの響きとアナログの柔らかで温かみある響きは相性抜群。ファンの方はもとよりですが、名曲がとりこぼしなく収められているため、ジャンゴ初心者の方にもおオススメです。この機会に是非、ご入手ください。
トラックリスト A1. Ain’t Misbehavin A2. Minor Swing A3. Manoir De Mes Reves A4. Nuages A5. Solitude A6. Viper's Dream A7. Georgia On My Mind B1. Swing 42 B2. I'se A Muggin' B3. Charleston B4. In The Still Of The Night B5. Mystery Pacific B6. After You're Gone B7. Echoes Of Time (La Marseillaise)
2025年3月16日発売 DJANGO REINHARDT / ET LE QUINTET DU HOT CLUB DE FRANCE AVEC STEPHANE GRAPELLI