弊社は2024年より、ポルトガル最古のレーベル Valentim de Carvalho の作品の取り扱いを本格的に開始しました。これまでは、《ファドの女王》アマリア・ロドリゲス本人の作品を中心に紹介してきましたが、今回は少し趣向を変え、アマリアにオマージュを捧げた若手音楽家の作品を取り上げます。 没後25年を経てもなお、新たなファンを魅了し続けているアマリア・ロドリゲス(1920-99)。本作は、彼女の愛唱歌をエレガントなジャズ・ピアノ・インストで聴かせる作品です。ピアニストのジュリオ・レゼンデ(1982- )は、ポルトガル南部の都市ファーロ出身。幼い頃からピアノを習い、クラシック教育を受けていましたが、即興演奏の楽しさを知りジャズへ転向。2007年にアルバム“Da Alma”でソロ・デビューを果たしました。その後、自作の室内楽風作品から、さまざまなヴォーカル・ナンバーのインスト・アレンジまで、バンド・リーダーとして自身のグループで精力的に活動。また、2017年にはシンガー・ソングライターのサルヴァドール・ソブラルらとともにポップ・ロック・バンド《Alexander Search》を結成し、大きな話題を呼びました。 そんなポルトガルを代表する若手アーティストの彼が、自身のルーツを見つめ直し、改めて出会ったのがファドでした。そして、ファドへの深い愛情を最大限に引き出したのが、2013年発表の本作“Amlia por Jlio Resende”です。本作は、ジュリオにとって初のピアノ・ソロ作品であり、ファドの名曲を基にジャズとして再構築するという挑戦的な試みでした。彼は単なるピアノ演奏にとどまらず、ピアノそのものを「歌わせる」ことで、ファドの魂を表現しようとしています。このアルバムはポルトガル国内の音楽評論家から高く評価され、さらにフランスの権威ある音楽誌 『CLASSICA』において、最高評価である「CHOC DISC *****(5つ星)」を獲得しました。 さらにジュリオは、アマリアの楽曲「Medo(恐れ)」において、彼女のヴォーカルと自身のピアノによる“(それまで不可能と思われていた)デュエット”を実現しました。これは、アマリアのレーベル Valentim de Carvalho を説得し、史上初めて彼女の歌声との共演を許可された画期的な試みでした。また、「暗いはしけ」や「ポルトガルの家」といったアマリアの名曲も、ファド特有の哀愁の旋律を活かしつつ、洗練されたコードワークやリズム、即興演奏を交えて独自のアレンジでカヴァーしています。 ファド・ファンにもジャズ・ファンにも、ぜひ聴いていただきたい一枚です。
●日本語解説/帯付き
トラックリスト 1. Fado Portugus 2. Vou Dar De Beber Dor - A Casa Da Mariquinhas 3. Tudo Isto Fado 4. Foi Deus 5. Estranha Forma De Vida 6. Uma Casa Portuguesa 7. Barco Negro 8. Gaivota 9. Ai Mouraria 10. Amndoa Amarga 11. Medo dueto com Amlia Rodrigues
2025年3月16日発売 JULIO RESENDE / AMALIA FOR JULIO RESENDE