「ギターラ・ポルトゥゲーザ」は、一般的には「ポルトガル・ギター」の名前で知られるポルトガル独自の撥弦楽器で、その独特な倍音の響きが大きな特徴です。首都リスボンのファドでは伴奏楽器として知られていますが、リスボンから北約200�劼飽銘屬垢覲惘狹垰團灰ぅ鵐屮蕕任呂茲蠡腓�な胴体を持つ「コインブラ型」が使われ、独奏楽器として発展しました。撥と指弾きを併用する独自の奏法によって、きらめく高音と深い低音を自在に操ることができます。その楽器を“ひとつの宇宙”にまで高めた人物こそ、カルロス・パレーデス(19252004)です。 彼はコインブラに生まれ、祖父ゴンサーロ、父アルトゥールら、三代にわたりギターラの系譜を築いた名家に育ちました。幼少期から父に師事し、9歳で共演、14歳で国営放送に出演。早くも「天才少年」と呼ばれました。青年期にリスボンへ移住すると、サン・ジョゼー病院に勤務しながら音楽活動を続け、1950年代後半には作曲家・映像音楽家としても活躍。サラザール独裁政権下では共産党員として18か月間投獄されるも、牢中でなお曲想を練り続けたと伝えられます。革命後には自由と希望の象徴として国民的存在となり、彼の音楽は「ポルトガルの魂」そのものと評されました。そんな彼を《ファドの女王》アマリア・ロドリゲスは「ジェロニモス修道院のような国宝」と讃え、後年には「千の指を持つ男」と呼ばれるほどの超絶技巧と感性を兼ね備えた芸術家として敬愛されています。 1967年のデビュー作『ギターラ・ポルトゥゲーザ』は、伝統を革新へと昇華させた歴史的傑作です。〈Variaes em R Maior〉〈Porto Santo〉〈Fantasia〉〈Verdes Anos〉など、いずれも代表曲となった名演を収録。技巧を誇示せず、旋律の透明感と感情の深みで聴く者を魅了します。フェルナンド・アルヴィン(Fernando Alvim)のギターを伴いながら、パレーデスのギターラはポルトガルの風景と人々の情感を映し出すように歌い上げます。この作品によって、ソロ楽器としてのギターラ・ポルトゥゲーザが初めて世界に知られる存在となりました。初めて彼の演奏を耳にしたアマリアが感涙したという逸話も、彼の音楽がいかに衝撃的だったかを物語ります。 そして2025年、生誕100年を迎えたこの節目に、ポルトガル最古の名門〈Valentim de Carvalho〉が両作をアナログ盤のみで正規復刻いたしました。半世紀以上を経てもその音は驚くほど生々しく、ギターラの弦が一音ごとに時代を越えて響き渡ります。ポルトガル音楽の精神を最も純粋な形で刻んだ1枚であり、“ギターラの詩人”カルロス・パレーデスの偉業を体感するための決定的再発です。今こそ、この深遠な音の宇宙に触れてください。